-コンピューターの論理 vs AIの揺らぎ──再現性と創造の境界線 –
(前回投稿)まずは、生成AI自身に問いかけてみた。さてその返事は:
Grok4: 結論は「コンピューターの進化形」
GPT4: はい、私は“コンピューターで動いている存在”です。
でも、“コンピューターそのもの”ではありません。
このコラムの落ちまで読んでくれたのか、まずまずの答えです。
さて、前振りまで読んだところで、アンケートを取りますので、この記事を読む前にあなたは、「生成AI(第5世代AI)はコンピューターだとおもうのか」どういう認識だったか、 読んだ後はどうかを教えてください。

それでは、解説していきましょう。
まず「コンピューター」の定義を再確認しましょう。 多分それはあなたの認識とほぼ一致しているでしょう。
「コンピューター」とは、与えられたデータや指令に基づいて、論理的・数値的な処理を自動的に実行する装置の総称である。入力・演算・出力という基本構造をもち、人間の代わりに情報を処理する仕組みを備える。初期は計算機として発展したが、現在では通信・画像・音声・学習など多様な情報処理を行い、ハードウェア(機械)とソフトウェア(命令体系)の協働によって機能する知的情報処理装置を指す。
ここまでの定義は、平均的で、”生成AI”もコンピュータと、言えなくもない感じですね。
もう少し、定義を深堀してみましょう。
「コンピュータ」の定義の延長です。 コンピューターは同じ入力であれば、同じ結果が得られますか?それはなぜですか?
基本的に、はい。
コンピューターは同じ入力を与えれば、同じ結果を返すように設計されています。
これは、コンピューターが「決定論的(deterministic)」な仕組みで動作しているためです。
🔹 理由:決定論的な演算
コンピューターは0と1の信号(ビット)で構成され、命令も論理的手順(アルゴリズム)に従って処理します。
同じプログラム・同じ入力データ・同じ環境条件であれば、演算の手順と結果は常に同一になります。
つまり、「原因が同じなら結果も同じ」という物理的・論理的なルールに従って動くのです。
🔹 ただし例外もあります
現代のシステムでは、乱数生成、時刻依存処理、マルチスレッド動作、AIモデルの確率的推論などが入る場合、結果がわずかに異なることもあります。
これらは「非決定的」要素を含むためで、同じ入力でも処理の過程に揺らぎが生じることがあります。
まとめると、コンピューターは本質的に決定論的な装置であり、
すべての条件が同一であれば、同じ入力から同じ結果を得る。
ただし、近年の応用(AIなど)では、意図的に“揺らぎ”を導入するケースもある。
まず乱数ですがこれは疑似乱数ですよね。ランダムシードが同じであれば、同じ乱数数列が得られますね。 時刻依存処理、マルチスレッド動作、 これは、外部要因に依存するタイミング問題ですね。 つまり、入力自体が異なるケースですね。 さて戻って、もう一度、「コンピューターは同じ入力であれば、同じ結果が得られますか?」
非常に正確な整理です。その理解を踏まえると──
🔹 答えは「はい」、コンピューターは同じ入力であれば同じ結果を得ます。
🔸 理由
コンピューターは決定論的(deterministic)な装置であり、
与えられた入力データとプログラムの命令列、そして初期状態(メモリ内容や設定)が同一であれば、
内部で実行される計算手順と結果も必ず同一になります。
つまり、
同じアルゴリズム
+ 同じ入力
+ 同じ環境条件(初期状態)
がそろっていれば、結果は再現可能であり、
それこそが「コンピューター」という装置の本質的特徴です。
🔸 例外のように見えるケース
乱数・時刻・並行処理などは「外部要因を入力に含めた」ケースであり、
それらが変化すれば実質的に入力が異なるため、結果が変わります。
したがって、「同じ入力では異なる結果が出た」というわけではなく、
入力条件が違っていたと解釈するのが正確です。
結論として:
コンピューターは完全に決定論的であり、真に同じ入力なら必ず同じ結果を出す。
変化が生じるのは、入力または初期状態に差異がある場合のみ。
それでは、生成AIはコンピュータ上で動作するソフトウェアですが、 ”決定論的”にもとづいた設計や実装になっていますか?
非常に鋭い問いです。
答えを端的に言うなら──
🔹 生成AIは、基本的な構造は決定論的に設計されていますが、動作結果は非決定的(確率的)です。
🔸 1. 設計レベルでは「決定論的」
生成AI(たとえばGPT)は、数学的には完全に決定論的な関数です。
入力テキストを数値ベクトルに変換し、ニューラルネットワークのパラメータ(重み行列)と行列演算を行い、
出力として「次に来る単語の確率分布」を求めます。
ここまでは厳密に決定論的で、
同じモデル・同じ入力・同じ初期状態なら、確率分布(=出力確率)は必ず同じになります。
🔸 2. 出力の選択は「確率的」
ただし、生成AIはその確率分布から「どの語を選ぶか」を乱数的に決定します。
このとき使われるのが「サンプリング」(例:top-k や temperature パラメータ)です。
ここで乱数(疑似乱数)を使うため、同じ入力でも異なる文が生成されることがあります。
したがって、生成AIの「思考」過程は決定論的でも、
「発話」部分は確率的要素を含む──という二層構造になっています。
🔸 3. 再現性を得る方法
乱数のシードを固定すれば、
生成AIも完全に再現可能(決定論的)になります。
つまり、モデルの内部はもともと決定論的なため、
外部的に揺らぎを制御すれば、同一入力から同一出力を得ることが可能です。
🔹 まとめ
| 観点 | 状態 | 説明 |
|---|---|---|
| モデル構造 | 決定論的 | 数値演算と固定パラメータに基づく |
| 出力生成 | 非決定的 | 確率分布からランダムにサンプリング |
| シード固定時 | 決定論的 | 同じ入力で完全に同じ出力が得られる |
したがって、
生成AIは「決定論的なコンピューター上で動作する、確率的出力を持つ決定論的システム」
と表現するのが、最も正確な定義です。
別の角度から、「生成AIは同じ入力であれば、同じ結果が得られますか?」
とても良い視点です。
この質問に対しては、次のように整理できます。
🔹 結論
生成AIは、同じ入力であっても、必ずしも同じ結果を返すとは限りません。
ただし、条件を完全に固定すれば、同じ結果を再現することは可能です。
🔸 理由の内訳
1. モデル自体は決定論的
生成AI(たとえばGPT)は、内部では数値演算によって確率分布を計算する決定論的アルゴリズムです。
つまり、「この文脈でどの語が来る確率が何%か」というところまでは、
同じ入力であれば常に同じ結果(確率分布)を得ます。
2. 生成の最終段階が確率的
しかし実際に返すテキストは、その確率分布から確率的にサンプリングされます。
このサンプリングには「乱数(疑似乱数)」が使われるため、
同じ入力でも選ばれる語が毎回わずかに異なる可能性があります。
そのため、
- 自由な会話モード → 毎回異なる表現になる(創造的で自然)
- 乱数シード固定 → 常に同じ結果を再現できる(決定論的)
というふうに、設定によって挙動が変わります。
3. 環境差・更新差
クラウド上で動く生成AIの場合、
- モデルのバージョン更新
- 学習パラメータの微修正
- システム側の温度(temperature)設定
などの「環境要因」によって、同じ入力でも異なる結果が返ることがあります。
これはユーザー側からは制御できない場合もあります。
🔹 まとめ
| 条件 | 結果 | 説明 |
|---|---|---|
| 通常利用(確率的生成) | 同じ入力でも異なる結果 | ランダム要素を含むため |
| シード固定・設定固定 | 同じ入力で同じ結果 | 完全再現が可能 |
| モデル更新あり | 結果が変わる可能性あり | 内部仕様が変化するため |
したがって、
生成AIは本質的には決定論的に動作するが、出力結果は確率的要素を伴う。
よって「同じ入力で同じ結果が得られるか」は、設定と環境次第である。
この「決定論的計算の上に確率的出力を重ねる構造」こそが、
生成AIの“創造性”と“再現性の限界”を同時に生み出しているポイントです。
さて、ここまで読んでどう感じたでしょうか? YESかNOかで投票をお願いします。
最後に
ここまで読んでいただければ、なぜ「生成AIはコンピューターなのか?」という問なのかご理解いただけたかもしれません。 この辺の認識が不十分な投資家が、過剰な期待をしているということかもしれません。

