なぜ壁は膨らんだのか?IT駆使で迫るコンクリート劣化の原因調査 ~2から6週間分 中間まとめ ~

昨年12月に本格着手して、さまざまな角度でITを駆使しながら進めてきています。以下は、ここまでに確認できた結果の要点の書き出してまとめます。 当初計画した調査環境の整備が整ってから2週間ほどしか経っていませんが、当初の仮説とは少し異なる新たな仮説を立てています。

ATOMCAM2撮影、画像キャプチャ(コンクリート劣化)


カメラでの定点観測は2025/12/23より運用開始: 上のとおり、キャプチャ開始時点から、後述のAEセンサー、温度センサー(熱電対)を追加しています。また、上右よりの2本のテープ状のものは水濡れ検知シールです。水にぬれると下の写真のように赤色に変わり乾いても赤のままなので、水が垂れてきたことがあったかどうか分かります。今のところ、水は出てきていません。同様に熱電対を入れた塩ビ管内にも。このシールを入れたので、壁の内側で結露が発生したかどうかを判別できるでしょう。

mizu
水検知シール

MCR-4TCでの温度測定

温度測定
温度測定

今のところ気温が一瞬0℃になりましたが、コンクリート裏はそこまでは下がっていません。気温が下がってコンクリート内の温度が下がるところもあれば、下がらないタイミングもあります。単純に外気温だけがコンクリート裏側の温度に効いているわけではないようです。

 また、場所によって外気温の影響が異なるように見えます。

AE測定

[ EEPROM Data Analysis Report ]
Type | Date Time (UTC/Local) | Millis (raw) | Details
--------------------------------------------------------------------------------
SYNC | 2026-01-14 13:25:51 | 325120 | Time Synchronized (Unix:1768364751)
DATA | 2026-01-14 14:25:45 | 3919360 | CH0:0, CH1:19, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-15 06:45:30 | 62704128 | CH0:0, CH1:8, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-16 00:26:07 | 126341632 | CH0:0, CH1:8, CH2:0, CH3:1
DATA | 2026-01-16 06:11:56 | 147090432 | CH0:0, CH1:6, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-16 07:11:10 | 150644736 | CH0:0, CH1:0, CH2:3, CH3:7
DATA | 2026-01-16 10:10:08 | 161382912 | CH0:0, CH1:16, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-16 10:16:08 | 161742848 | CH0:0, CH1:7, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-16 10:57:17 | 164211968 | CH0:0, CH1:6, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-16 12:33:41 | 169995520 | CH0:0, CH1:6, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-16 12:47:02 | 170796544 | CH0:0, CH1:7, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-17 16:21:30 | 270064640 | CH0:0, CH1:11, CH2:1, CH3:1
DATA | 2026-01-18 01:01:31 | 301265664 | CH0:0, CH1:6, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-18 05:01:11 | 315645696 | CH0:0, CH1:6, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-18 12:22:00 | 342094336 | CH0:0, CH1:1, CH2:6, CH3:6
DATA | 2026-01-19 00:38:54 | 386308608 | CH0:0, CH1:45, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-19 06:01:51 | 405686016 | CH0:0, CH1:8, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-20 12:54:55 | 516869376 | CH0:0, CH1:6, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-20 18:41:19 | 537653504 | CH0:0, CH1:7, CH2:0, CH3:0
DATA | 2026-01-22 01:14:26 | 647640576 | CH0:0, CH1:7, CH2:0, CH3:3
DATA | 2026-01-25 12:50:54 | 948628992 | CH0:0, CH1:9, CH2:0, CH3:2
DATA | 2026-01-29 15:48:20 | 1304874752 | CH0:0, CH1:23, CH2:3, CH3:4
RSET | 2026-01-30 12:55:41 | 0 | System Boot / Reset Detected
SYNC | 2026-01-30 12:58:24 | 162304 | Time Synchronized (Unix:1769745504)
--------------------------------------------------------------------------------
Analysis Finished.

AEは、たまに何かを拾っていますが、ほとんど発生していないようです。1/16がちょっと多い感じがしますが、今のところ顕著な問題は起きていなさそうです。

コンクリート壁穿孔工事関連

熱電対を設置した状況からそれぞれの場所ごとにコンクリート壁と、壁内の土の間に隙間があり、場所によってその隙間が、約5mmから約48mmと大きなばらつきがあるように見えます。

中間まとめ 

 今のところ、新たに見えた事象は、コンクリート裏に隙間があるようにみえるということです。その隙間と、コンクリート奥の温度に関連性があるように見えます。つまり、隙間が大きいほど、外気温が下がっても温度が下がりにくそうということです。

 それとは別に隙間に関係なく、タイミングによってどの面の温度が低くなるのかが変わりそうです。

温度測定が終わる4月頃に、熱電対をとおした塩ビパイプを取り出して、内視鏡カメラで壁の裏側の隙間の状態を調査しようと考えています。

今年はほとんど雨降っておらず、乾ききっている感じなので問題事象は発生しにくそうです。

新たな仮説

これまでの仮説はすべての面が均等にアイスレンズが成長するように考えていましたが、片面だけ発生するケースもありそうな感触です。つまり、東面と南面で交互に発生し隙間が広がったり、逆に押されてほとんどなくなったりすることが繰り返されたのかもしれません。

さらにここまでの仮説で将来発生することが予想されていた西面北寄りでの事象発生ですが、下の写真のように新たに発生していることを確認しました。

crack
ひび割れ

ここまでの仮説を補強する材料と言ってよいでしょう。 

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建築から約10年で徐々にコンクリート壁の表面にひび割れが入り膨らんできた。修復が必要だが、単純に表面を直しただけでは再発することが容易に想像できる。そこで、ダメージの根本原因の特定を目的として、原因についての仮説を立て妥当性の検討をした。残念ながら決め手となる証拠を得られず仮説の域を出ていない。そこで、明確に原因特定するためにITを駆使して温度やAEのデータを採取して検証することとした。

これまでの外観の変化、ストリートビュー&撮影記録より

2012年4月時点 (建築から3年後)↓ストリートビューより

2017年8月↓ストリートビューより

2018年4月↓ストリートビューより

2021年4月↓ストリートビューより

2024年11月↓ストリートビューより

2025年12月↓ 撮影

仮説と調査方法

壁面の中央からひび割れが入り始めて、左右上下に進行している状況と中央部を中心に膨らんでいることから凍結膨張が主要因と仮説を立てた。地震の影響も受けている可能性も考えられるが、地震であれば周辺部にも中央部と同様にひび割れがあってもおかしくはない。しかし、周辺部が起点のひび割れがないことから地震は主要因ではなく付加要因と推測した。
 凍結膨張(アイスレンズ)が発生する条件は、先人の研究結果(①凍結過程にある土中のアイスレンズ近傍の水分・熱移動、 ②土の凍上発生メカニズムについて、③土の凍上性評価手法に関する研究)などから、水分・温度・土粒子サイズの要因がそろうと発生することが知られている。本事例では水分と粒子サイズについては、過去の研究結果と合致している。3年前につぎの写真の通り床面に穿孔調査を行った。

土の粒子サイズは1mm以下を中心としている真砂土で、アイスレンズの影響を抑制できるほど大きいわけではない。また、一定期間穴に蓋をしていて、蓋を開けた直後の写真が次である。

蓋の内側には、多量の結露が発生していた。この結果から、多量の水分が存在していて、土は水分を透過するほど十分に大きいことが確認できた。これらより、水分と粒子サイズについては合致していると判断できる。

残るのは温度である。少なくとも外気温や一部の壁面は期間中に零下になったことが気象庁のデータおよび昨年計測した結果から確認できている。

推定される発生モデル
図1.推定される発生メカニズム


この発生モデルを確認するため、コンクリート壁内側の温度(複数個所)および外気温を測定する。また、内圧で破壊(コンクリート破砕音)を検知するAE(アコースティックエミッション)センサシステムを構築して破砕が発生するタイミングをとらえる方針です。 そして、外観の映像も記録していきます。

・撮影、動画化

上の通りカメラでの定点観測は2025/12/23より運用開始済みです。
画像をアップロードする仕組みを構築しました。自動アップロードしている画像が見れる構築方法を記載したページはこちらです。→「hsBoxで、ATOM Cam 2の映像をキャプチャしてNASに蓄積、さらにクラウドにアップロードする https://mic.or.jp/info/2025/12/25/cam/」
映像監視への、漏水状況の追加監視について2026/1/12
https://mic.or.jp/info/2026/01/13/cam-2/
温度測定点設置壁裏の温度測定準備完了。見えてきた「隙間」を内視鏡カメラ「YPC99」でどう捉えるか?
https://mic.or.jp/info/2026/01/28/temp-2/

・温度測定

4か所の温度をロギングする仕組みは用意できました。事前準備を行いました。→事前準備の結果はこちらです。 2025/12/21に4点測定を開始し、12/24に測定予定の場所の近くに仮配置しました。

4p
4p

上のように、4か所に温度を測定するための熱電対を設置し、ロギングを実施しています。この状況及び測定結果を公開するページを作成しました。温度測定結果のデータはこちらから。
温度測定点設置壁裏の温度測定準備完了。見えてきた「隙間」を内視鏡カメラ「YPC99」でどう捉えるか?

・AE測定

準備中です。 部材発注し、入手済みです。12/27時点でアナログ部分の製作と検証を完了しました。引き続きAD変換部の構築作業に着手しました。記事については随時公開していきます。 
AE測定、長期間ロギングシステム構築 (その1)
アナログ部製作編  [公開済み]https://mic.or.jp/info/2025/12/29/ae/
アナログ部検証編 [公開済み]https://mic.or.jp/info/2025/12/30/osc/
AD変換部 検討事前検証編 [公開済み]https://mic.or.jp/info/2026/01/02/ad-3/
信号検出実験編 [公開済み]https://mic.or.jp/info/2026/01/03/ae-4/
複数信号キャプチャ実験編 [公開済み]https://mic.or.jp/info/2026/01/04/2ch/
最終検証編 [公開済み]https://mic.or.jp/info/2026/01/09/ae-2/
運用開始編 [公開済み]https://mic.or.jp/info/2026/01/10/ae-3/

ロギングした結果は、温度測定結果と同様にアップしていく予定です。

まとめ

何からの結論が得られることを期待して進めていきます。それぞれのデータ採取に関するページまで公開してきました。 収集した結果からの総合的なまとめについては別途作成・公開予定です。
中間まとめ [公開済み]https://mic.or.jp/info/2026/02/01/damage-2/

その他

みつけた抑制策
[参考資料] 凍害抑制に関する研究(JST)
https://shingi.jst.go.jp/pdf/2022/2022_kansai_004.pdf