建築から約10年で徐々にコンクリート壁の表面にひび割れが入り膨らんできた。修復が必要だが、単純に表面を直しただけでは再発することが容易に想像できる。そこで、ダメージの根本原因の特定を目的として、原因についての仮説を立て妥当性の検討をした。残念ながら決め手となる証拠を得られず仮説の域を出ていない。そこで、明確に原因特定するためにITを駆使して温度やAEのデータを採取して検証することとした。
これまでの外観の変化、ストリートビュー&撮影記録より
2012年4月時点 (建築から3年後)↓ストリートビューより

2017年8月↓ストリートビューより

2018年4月↓ストリートビューより

2021年4月↓ストリートビューより

2024年11月↓ストリートビューより

2025年12月↓ 撮影

仮説と調査方法
壁面の中央からひび割れが入り始めて、左右上下に進行している状況と中央部を中心に膨らんでいることから凍結膨張が主要因と仮説を立てた。地震の影響も受けている可能性も考えられるが、地震であれば周辺部にも中央部と同様にひび割れがあってもおかしくはない。しかし、周辺部が起点のひび割れがないことから地震は主要因ではなく付加要因と推測した。
凍結膨張(アイスレンズ)が発生する条件は、過去の先人の研究結果(①凍結過程にある土中のアイスレンズ近傍の水分・熱移動、 ②土の凍上発生メカニズムについて、③土の凍上性評価手法に関する研究)などから、水分・温度・土粒子サイズの要因がそろうと発生することが知られている。本事例では水分と粒子サイズについては、過去の研究結果と合致している。3年前につぎの写真の通り床面に穿孔調査を行った。

土の粒子サイズは1mm以下を中心としている真砂土で、アイスレンズの影響を抑制できるほど大きいわけではない。また、一定期間穴に蓋をしていて、蓋を開けた直後の写真が次である。

蓋の内側には、多量の結露が発生していた。この結果から、多量の水分が存在していて、土は水分を透過するほど十分に大きいことが確認できた。これらより、水分と粒子サイズについては合致していると判断できる。
残るのは温度である。少なくとも外気温や一部の壁面は期間中に零下になったことが気象庁のデータおよび昨年計測した結果から確認できている。

推定される発生モデル


この発生モデルを確認するため、コンクリート壁内側の温度(複数個所)および外気温を測定する。また、内圧で破壊(コンクリート破砕音)を検知するAE(アコースティックエミッション)センサシステムを構築して破砕が発生するタイミングをとらえる方針です。 そして、外観の映像も記録していきます。
・撮影、動画化

上の通りカメラでの定点観測は運用開始済みです。
画像をアップロードする仕組みを別途構築する予定です。
・温度測定
4か所の温度をロギングする仕組みは用意できました。現在、事前準備を実施中です。
取得したデータ結果もアップロードする予定です。
・AE測定
準備中です。 部材発注済みです。
ロギングしてクラウドに結果を自動アップする仕組みを構築する予定です。
まとめ
何からの結論が得られることを期待して進めていきます。それぞれのデータ採取に関するページは別途作成・公開予定です。
その他
みつけた抑制策
[参考資料] 凍害抑制に関する研究(JST)
https://shingi.jst.go.jp/pdf/2022/2022_kansai_004.pdf
