太陽光発電のデータチェックをAI化

太陽光発電のデータを定期的にチェックしています。夜間だけ街灯を点灯するので夜昼の変動はありますが、これまで半年ほど一定であった電力消費がある時点から階段状に増加していることに気が付きました。調べると使用する必要のないポンプに電源が入れられ無駄な電気が使われる状態になっていました。これはもっと早く気づきたい事象です。
 以前、太陽光発電システムの故障を検知してメール通知する仕掛けを紹介しましたが、今回のような未知のパターンの異常は検知することができません。未知のパターンの異常であっても検知できる仕掛けであれば、今回の事象ももっと早く気が付くことができたのではないかと考えました。いわゆる今どきのAIの活用です。もっと的確に表現するとディープラーニングの活用です。この方法なら、以前に自動化した故障判断アルゴリズムもまとめることができるでしょう。
 ということで、太陽光発電のデータチェックをAI化してみます。

太陽光発電の経年劣化による発電量の減少とメーカー保証について

前回の解析に続いて、経年劣化の状況を整理しておきます。最初に実際のデータです。7月の発電量のうち発電量が最大だった日のデータを年ごとにプロットしたものです。3つとも劣化していることが分かります。変更の影響を受けている部分はありますが、全体的な傾向から劣化していると言ってよいでしょう。

このような経年劣化に関連した保証しているメーカーもあります。まずはその辺から、保証内容にまとめたサイトもありますので全体像はそちらを参考にしてください。ここでは、経年劣化に関する保証内容のみをまとめます。

メーカ名10年保証11年以降
パナソニック JIS C 8918の7.1(性能)に示された公称最大出力に対して、10年で81%未満 25年で72%未満 ※1
シャープ JIS C 8990で規定するAM1.5、放射照度1,000W/m2モジュール温度25℃、最大出力の90%を基準にしてその90%11-15年 85%
16-20年 80%
京セラ公称最大出力の81%10-20年 72%
東芝 JIS C 8918の7.1(性能)に示された公称最大出力に対して、10年で81%未満 25年で72%未満
長州産業 CIC JIS C 8918 に示された公称最大出力に対して、81%未満 11年目から15年間 :72%未満※1
ソーラーフロンティア 公称最大出力の交差範囲内の最小許容値に対して10年で10%以上低下 20年で20%以上低下

※1:手続きをいろいろしておかないと保証書も発行されない仕組みになっている。みんなちゃんと手続きをしているのだろうか?

上の通り81%未満のメーカが多い。公称最大出力を基準としているところが多いが、実際の発電量と見比べたとき、何パーセントになったときに保証されるものなのか非常に分かりにくい。上の実際のデータで見てもわかるように10年で初期の発電量の80%程度になることは当たり前のように推測されます。

 そして、どうなったら「保証の対象」つまり保証の基準を下回っていると判断されるのかをメンテナンス会社に聞いてみましたが、判断基準や確認方法についての返事は帰ってきませんでした。 80%とか70%の微妙な数字では、「天候や太陽高度の影響により変わる」というごく当たり前のことをいって保証の対象外とされています。たぶん出力が初期の50%以下になるとか極端な数値にならないと保証されないでしょう。

2013年7月
発電量(1日分)
2019年7月比率
劣化度
site154.0kWh45.584%
site232.027.686%
site365.655.785%

上表のように発電量は10年で初年の80%程度の発電量となるので、発電収入などを見積もるときは平均的にこの程度の劣化があるものとして見積もったほうが良いでしょう。

太陽光発電システム導入環境での消費電力解析 その2 他サイト

前回の解析に続いて、2019/2/1以降について、サイト3、サイト2について確認します。前回と同様に時刻ごとの消費電力の変動を確認します。まず、サイト3のデータです。

サイト3

一度減っていた消費電力が依然と同じ状態に戻った後は、これまでの解析と同じ傾向であることが確認できました。

同様に、サイト2のデータです。

サイト2については、これまでにはなかった事象が見られます。6/29の19:00から0.10kWhほど消費電力量が減っていました。詳細を見るために、消費電力量が減少する直前の6/27と減少後の7/9のデータをプロットしました。

見逃していましたが、7/9 13:30ころに消費電力量が元の状態に戻っていたことを確認しました。

 これについては、浄化槽の点検業者から連絡があり、浄化槽ブロアーが故障しており暫定的に仮のブロアーを設置していたことが分かりました。状況から6/29の消費電力の減少はブロアーの故障で発生し、7/9の消費電力の増加は仮ブロアの設置によって発生したと判断できます。つまり、0.10kWh分はブロアーの消費電力わかりました。 現在、下水道の供用開始にむけて準備中で、浄化槽自体を無くす予定です。このため、ブロアーもなくなるので、0.10kWh分の消費電力が減少する見込みです。実際にどのようになるか下水道に切り替えた後に検証してみます。

太陽光発電システム導入環境での消費電力解析

これまで、太陽光発電のデータ解析について書いてきましたが、そもそもなぜ書き始めたかについて詳しく書いていませんでした。「パワーコンディショナーの消費電力」や「ここまでのまとめ」で、パワーコンディショナーの消費電力についての挙動をあるていど理解できたので、それを踏まえて気になっている点について解析してみます。

解析したかったのは、さきに書いたサイト3における「パワコン?謎の消費電力増加」の総消費電力量の増加の原因です。

問題の期間(2018年5月から2019年2月までの間)について、”パワコンでの解析”のように各時刻ごとの消費電力をプロットしてみます。

日ごとの毎時消費電力量

謎の消費電力増加 その4のデータと同様な絵柄ですが、5回ほど階段状に変化してそれぞれで別の挙動をしているように見えます。そこで、同様に朝と夕方の時間帯分をプロットしなおします。

日ごとの毎時消費電力量 朝方

朝方のデータから全体の階段情報変動はベースライン自体の変動に依存しているように見えます。つまり、太陽光発電システム以外で常に一定の電力を消費している何かが増えたと推測されます。

日ごとの毎時消費電力量 夕方

夕方のデータでは、1日に1分づつ変化するパワコンのモード切替時刻の影響により6/13以前と7/9から9/7あたりは19時台の消費電力が徐々に変化しているのがわかります。
9/14から12/1あたりは激しく変動しています。昼間と夜間の差は同じようにあるのでベースが変動していると推測できます。
12/1以降は5回ほど階段状に増減しています。それぞれの区間での昼間と夜間の消費電力差は同じです。この区間内での変動はベースラインの変動のみと考えてよいのですが、9/7以前にみられた19時、18時台の1日づつ変化するパワコンのモード切替時刻の影響が見られなくなっています。このパワコンの挙動の変化のタイミングと、消費電力量のベースラインの変化のタイミングが一致しているので、ベースラインの変化の原因がパワコンに依存しているのではないかと想像されます。次回、詳細を確認します。

パワーコンディショナーの消費電力

以前に推測・予測した「昼間は、発電した電力や充電した電力を消費することで動作している。雨天等で長時間発電がない場合、充電した電力も使い切るために外部の電力を消費する可能性がある」の検証をしてみます。

これは、”発電量が少ないときに微妙な消費電力増加”という事象がおきているかどうかで確認できると、考えました。

図1:午前中すこし曇っていたある日の発電量

パワコンディショナー内の充電分を考慮して、図1の12時点の発電量と1日の全発電量との相関を見ます。

朝方の時間帯のデータは夜間モードの影響のほうが大きく、発電量との相関はなさそうです。 気にしている10時台のデータについては相関あると判断できる結果が得られました。違和感があるデータとならないように、晴天時のパワーコンディショナーの消費電力はほぼ100%太陽光発電分で賄っていて、発電量が減るにつれて徐々に買電分で賄っていると推測します。この消費電力は約0.2kW程度です。この消費分とは別に買電のために交流に変換する際に発生するロスは別にあると考えます。パワーコンディショナーの仕様に書かれている消費電力はその辺をまるめてきさいしているのでしょう。

パワーコンディショナーの消費電力の解析、ここまでのまとめ 

これまでにパワコンなどの消費電力について確認した情報を整理します。

1.製品仕様から読み取った情報

1a) 夜間と昼間で電力消費の状態が変化する。
1b) 昼間は発電した電力を消費し、消費電力は変換効率内の扱いとなり表面上は見えない。
1c) 機種によっては充電する機能(UPS)を持っている。

2.収集したデータや動作から確認した情報

2a) ”1a)”の状態が切り替わる時間は(日照時間)時期によって変わる。
2b) 夜間に消費される電力は変わることがある。

3.収集した情報からの推測、予測

3a) 夜間に消費される電力は仕様に記載されている消費電力より大きくなることがある。
3b) パワコン等のファームウェアのバージョン(コード内容)や設定などにより消費電力が変化する
3c) 昼間は、発電した電力や充電した電力を消費することで動作している。雨天等で長時間発電がない場合、充電した電力も使い切るために外部の電力を消費する可能性がある

パワコン?謎の消費電力増加 その4

以前のパワコン消費電力についての解析をもうすこし越し掘り下げてみます。すべての時刻 について”昼間から夜間の消費電力に切り替わる時刻がどのように推移するか”を最新のデータでプロットしなおしてみます。

やはり同じような傾向を示しています。日ごとに一定割合での減少と、2月5日の階段状の増加の2つの変化が見られます。

朝方と夕方のデータそれぞれのデータのみをプロットしなおします。

朝方については、これまでに解析した通り、夜間から昼間の消費電力に切り替わる時刻は変化していません。6時のデータ(6:00から7:00の合計)と前後の時間のデータが比率計算で、ほぼAM6:20に切り替わっていると判断できます。
また、2月5日前後で、昼間の消費電力が変わっていないことから、2月5日に発生した階段状の増加は、夜間の部分にのみ発生していることがわかります。

夕方については、毎日約1分ずつ遅い時間に切り替わるように変化しているように見えます。5月2日時点では19:20ころと推測されます。
5月1日と5月2日の日没時刻はそれぞれ18:52と18:53なので、夜間モードに切り替わるのは妥当な感じの時刻で、、毎日約1分ずつ遅い時間にずれているもの妥当言えます。発電量が下がったからパワコンが買電力から電力消費していると仮説を立てた場合は、パワコンの表示は18:50頃には0.0となっており19:20の時点では真っ暗です。このため、この時刻で発電量起因で切り替わっていることになり、妥当とは言えません。また、サイト2とサイト1のパワコンの動作に大きな差はないと判断して、5月1日の19時ころのサイト1のパワコン表示を確認した結果、”KP44M-J4-SS”は、19:10から19:15の間に、”KP55M-J4-SS”は19:17から19:18の間に、パワコン表示が滅灯することを確認しました。すべてのパワコンが同時に滅灯すると想定していただけに、意外な結果となりましたが、ほぼサイト2の夜間の消費電力増加はパワコンなどの太陽光発電システムに起因すると判断できます。

パワコン?謎の消費電力増加 その3

先に「昼と夜の消費電力の差は、時刻によって切り替わっているだけと判断できます。このような動作が想定されるのはパワコンです。次回以降パワコン観点で検討を行います」と書きましたが、今回はこの点について確認してみます。
 まず、なぜパワコンに着目したかですが、このサイト2では、1台の”KP55M-J4-SS”(パワコン)を使用しています。このパワコンの仕様として「 消費電力(夜間(交流側)) 0.5W、11.5VA(Typ.)」の記載があります。
http://www.solar-frontier.com/jpn/residential/products/pdf/discontinued/KP55M-J4-SS-A_KP44M-J4-SS-A.pdf
また、パワコン自体の表示器が、昼間は発電量が表示されているが、夜間は表示が滅灯し明らかに昼と夜で動作状態が切り替わり 消費電力量も変わっていることがわかります。
つぎの情報を見ると、パワコンの機種は違いますが、表示を滅灯したときより点灯したときの消費電力が大きいこともわかります。
http://www.faq.energy-innovation.omron.co.jp/print/faq/9

このグラフから、夜間の消費電力は0.26kW、昼間の消費電力は0.17kWで、その差は0.09kWつまり、90Wの差があることがわかります。
パワコンの使用に書かれた消費電力とは2桁ほど違っているので、本当にこれがパワコンの消費電力なのかは疑問です。 そこで、昼間から夜間の消費電力に切り替わる時刻がどのように推移するかを確認するために日ごとの18.19,20,21時それぞれの消費電力量をプロットしました。


この結果から、昼間から夜間の消費電力に切り替わる時刻は日々徐々に一定に変化しており、日没時刻から算出したと推測します。このような挙動をするのはパワコンなど太陽光発電システムくらいしか思いつきません。 パワコンの消費電力は0.5Wなのか、90Wなのか、パワコン以外に夜間電力消費が発生するものがあるのか確認してみます

ここまでの状況から、電力量が大きいかどうかの確認は必要だが、パネルが故障するなど、長期間発電量がゼロの場合、パワコンが無駄に電力消費するということがわかりました。発電システムの故障を検出したら、放置せずにすぐに修理するとか接続を切るとか処置をするべきでしょう。放置や変な処置をすると、淡路の風力発電のような事故につながるかもしれないので故障を早期に気付ける仕組みも重要そうです。

パワコン?謎の消費電力増加 その2

サイト2の夏の冬の消費電力で夕方は日照時間の影響が見えるが、朝方はずれがないように見えています。データの整理ミスの可能性が一番高いと思い再点検しましたがここでの間違いはなさそうです、これについても原因確認していきます」と前に書きましたが、今回はこの点について確認してみます。まず、考えられる原因について検討してみます。
①どこかの時点でデータ収集する時刻がずれた。集計ミスではなく機器の設定の問題を想定しています。
②天候の影響で、たまたま6月の該当日は早朝の日照がなかった。
③ ①、②のいずれでもない。パワコンなどの負荷側の挙動で発生している。

①の確認のため、別の日のデータをプロットしなおしました。6月、12月のデータは2013年分で、6月の2としたものは2014年4月分です。


2014年4月分でも夕方の消費電力の増加時刻の差が確認できますが、朝方の減少時刻には変わりがありません。このデータの日の気象庁データは快晴で、天候による朝方の減少時刻への影響はありません。念押しで、12月のかなり強い雨日のデータに変えてプロットしなおしました。


意外に朝方の減少時刻だけでなく、夕方の増加時刻にも影響はありませんでした。この結果からサイト2には日照により点灯・滅灯する機器の影響ではないという結論にたどり着きます。つまり、①、②ではないということです。昼と夜の消費電力の差は、時刻によって切り替わっているだけと判断できます。このような動作が想定されるのは③のパワコンや太陽光発電システムです。次回以降パワコンなど太陽光発電システム観点で検討を行います。

パワコン?謎の消費電力増加

データ集計の過程で、サイト3の消費電力が多めであること気が付きました。サイト3は街路灯のLED化の変更をした以外は変更がなく、消費電力が増える予定はありませんでした。
時系列で消費電力をチェックしました。同時にプロットしたサイト2の消費電力も
同様にほぼ一定で、増えるような変更はしていません。

まず、サイト2、サイト3について月ごとの総消費電力をプロットしました。太陽光発電として 気になるのは自己消費電力なのですが、自己消費電力量は、消費電力量と太陽光発電での発電量の 両方に依存するので、ここでは総消費電力のみを分析します。

総消費電力量の推移

  サイト2はほぼ一定です。多少冬場の電力消費量が多めな感じです。サイト3は夏と冬の電力消費量の変動が明確です。さらに、2016年以降に消費電力量が増加しています。現在は通常?の状態に戻っています。この謎の消費電力増加の 原因分析、調査を行います。
そこで、考えられる理由を挙げてみました。
①誰かが電気器具を接続して消費している。
②新たに導入した設備が電力を消費している。
③何らかの理由で、既存設備(太陽光発電以外の設備)の消費電力が増加している。
④何らかの理由で、太陽光発電システムの消費電力が増加している。

①が原因として一番怪しいが、消費電力が多い状態のとき、現地の確認を行い特に電気製品が使われている気配がないことを確認しました。
②に関しては、2013年以降の設備変更はなく原因ではありません。
③、④の根本原因は、設備が”故障している”か”動作状態が変わった”ことで消費電力量が増加していることと想定されます。

現地の外観や状況からは決め手となる原因は見つかっていません。これについての分析は置いておいて、 夏と冬の消費電力量の差について分析してみます。 夏至・冬至付近の晴天の日の1時間ごとの消費電力量を プロットしました。

夏と冬の消費電力

昼間より夜間の消費電力が大きい。これは街路灯の電気消費に依存します。それぞれのサイトには、街路灯と常時省電力を消費する設備があります。 街路灯の消費電力は、サイト2が0.8kW、サイト3が4.6kW程度で、常時消費される電力はサイト2が1.6kW、サイト3が1.4kW程度です。 夏と冬で明るい時間が朝と夕方とそれぞれで2時間程度違うため、その分、街路灯が消費する電力量が変わります。 ただ、サイト3については日照の影響以外にベースの消費電力が違うように見えるので、冬のデータから0.05kWを引いたデータでプロットしなおしてみました。


検証のため0.05kW分シフトして再プロットしたグラフ

想定される絵柄になりました。夏と冬の差が日照時間の2時間分の差だけで他に差がないように見える絵柄です。ということは、夏と冬で 0.05kWの消費電力の差が何らかの理由で発生しているということです。言い換えると前述の”動作状態が変わった”に該当する事象が発生しているということです。
今日はここまでです。今後、”動作状態が変わった”原因が何かを分析していきます。※ サイト2の夏の冬の消費電力で夕方は日照時間の影響が見えるが、朝方はずれがないように見えています。データの整理ミスの可能性が一番高いと思い再点検しましたがここでの間違いはなさそうです、これについても原因確認していきます。 また、上記の④の中にタイトルに記載したパワコンがあります。これについても分析していきます。

電力と電力量の表記ゆれがあるように見えますが、1時間分の消費電力量を断り書きせずに電力に換算しています。ほかの箇所もこの断り書きなしの菅さんをして書きます。