前回、4か月の入荷待ちを経てようやく交換用HDD(SeagateのIronWolf「ST4000VN006」)が届いたところまで書いた。記事の最後は、こう締めくくっていた──「次回は、いよいよこのドライブを使って、故障したLS210Dの復活に挑戦する」と。
というわけで、今回はその実作業の記録である。結論から先に書いておく。NASは、直らなかった。 ただし、これは失敗の記録ではない。直らなかったことで、かえって「何が壊れていたのか」がはっきりした。そして、その切り分けの先に、思いがけず前向きな道が見えてきた。順を追って書いていきたい。
まずは手順どおり ── 新品HDDへ換装して通電
やったことは単純で、ごく当たり前の手順だ。
最初に、以前の記事で開けたのと同じ要領でLS210Dの筐体を開け、力尽きた旧HDD(ST4000DM005)を取り外す。そこへ、今回届いた新品のST4000VN006を装着する。あとは電源を入れて、付属ソフト「NAS Navigator2」で本体が検出されるかを確認する──というのが、想定していた段取りだった。
ひとつ補足しておくと、LS210DはOS(Linux)そのものをHDD上に持っている。だから新品のまっさらなHDDを入れただけでは、そのままでは起動しない。本来は、作業用PCにファームウェアを用意してNASへ流し込む(TFTPでの書き込み)という一手間が必要になる。この手順自体は次回あらためて扱うとして、今回はまず「新品HDDを挿して電源を入れたら、NASがどう反応するか」を確かめるところから始めた。
想定外 ── 7回点滅は、止まらなかった
ところが、待っていたのは見覚えのある症状だった。
電源を入れると、本体前面の赤いLEDが7回点滅を繰り返す。そして、しばらくすると停止状態に入ってしまう。NAS Navigator2で探しても、本体は出てこない。
この「赤7回点滅」は、前回までのこのシリーズで、まさに故障の発端として記録した、あの症状そのものだ。当時公開した、起動から7回点滅を経て停止に至るまでのLEDの動画を覚えている読者もいるかもしれない。新品のHDDに換えれば、少なくともこの症状からは抜け出せる──そう期待していたのに、まったく同じ点滅が、また目の前で繰り返されている。
しかも、もう一つ気になることがあった。新品のHDDが、回転していない。 耳を近づけても、手で触れても、スピンアップの気配がない。NASがHDDに電源を回す前の段階で、すでに止まってしまっているように見えた。
ここで、ふと思い出したことがある。最初に故障したときのことだ。あのときも、LANケーブルを抜いた状態で電源を入れて、同じ「7回点滅→停止」をたどっていた。つまり、ネットワークに繋がっているかどうかは関係なく、本体は同じところで力尽きていたのだ。
条件を変えて切り分ける ── 犯人はHDDではない
ここまでで、手元には三つの事実が揃った。
ひとつ、旧HDD(壊れたとされる個体)でも7回点滅で止まる。ふたつ、新品HDD(PC側での確認はしていないが、買ったばかりの未使用品)に換えても、まったく同じ7回点滅で止まる。みっつ、LANを抜いても症状は変わらない。
もし故障の原因がHDDにあるなら、新品に換えた時点で症状は変わるはずだ。少なくとも、HDDがスピンアップするなり、エラーの種類が動くなり、何かしらの変化があっていい。そもそも、もしHDDだけの問題なら、本来の復旧フロー──赤7回点滅の状態でFunctionボタンを押すとLEDが白の高速点滅に変わり、PC側のファームウェアを取りに行く──に入れるはずだ。ところが今回は、HDDを入れ替えても症状はぴくりとも動かず、新品ドライブは回転すらせず、Functionを押してもその救出フローへ進めない。NASが、HDDに電源を供給して立ち上げるところまで到達していないように見える。
ここから導かれる結論は、ひとつしかない。
壊れているのは、HDDではない。NAS本体の側だ。 おそらくは、HDDに電源を回し、起動シーケンスを進める制御基板まわり。HDDを何に差し替えても同じ場所で止まり、ファーム流し込みの入口にすら立てないのだから、HDDは「容疑者」から外していい。
ちなみに、メーカーの公式案内では、LS210Dの赤7回点滅は「内蔵HDDの故障の可能性」と説明されている。実際、ネット上でも「7回点滅=HDD故障」として扱われることが多い。だが今回のように、新品HDDでも・LANを抜いても症状が動かない場合は、案内のとおりHDDを交換しても直らない。点滅回数はあくまで入口の手がかりであって、最終的な切り分けは「条件を変えて症状が動くかどうか」で確かめるしかない──というのが、今回の実地での教訓だ。本体側の電源・基板まわりの故障でも、同じ点滅パターンが出ることはある。
発想を切り替える ── 直すのはやめる。生きているなら、活用する
本体が壊れているとなると、選択肢は限られる。基板の修理は、専用環境と専門技術を要する世界で、個人で手を出せるものではないし、費用も本体価格をはるかに上回る。同じLS210Dを買い直すという手もあるが、そもそもこのNASは前回書いたとおりNAS全体で多重化してあり、ここに「どうしても取り戻したいデータ」が残っているわけではない。
だから、NAS本体の復活は、ここで潔く諦める。
しかし──である。今回の切り分けで、もう一つ確かになったことがある。HDDは、おそらく生きている。 壊れたのは本体側で、HDDはNASに電源すら回してもらえなかった。少なくとも今回新たに装着した新品ドライブは、一度も酷使されていない。そして旧ドライブにしても、「本当にHDDが壊れていたのか」は、まだ確かめられていない。本体が先に逝ってしまったので、HDDの生死は未確認のままなのだ。
ここで、このシリーズが一貫して掲げてきた「長寿命」という考え方を思い出したい。長寿命とは、すり減るものを無駄にすり減らさず、必要な使い方に徹しさせること。NASという「箱」は寿命を迎えたが、その中で眠っていたHDDという「資源」まで一緒に捨ててしまうのは、この考え方に反する。箱は死んでも、生きているドライブは活用する。 これが、今回たどり着いた方針だ。
では、どうやってHDDを繋ぐか ── 3.5インチという壁
方針は決まった。NASから取り出した3.5インチHDDを、Linux機(hsBox)に繋いで中身を確認し、生きているなら活用先を考える。
ところが、ここで物理的な壁にぶつかった。母艦に使おうとしたhsBox(HP EliteDesk 800ベースのUbuntu機)の蓋を開けてみると、内蔵できるのは2.5インチドライブだけで、3.5インチHDDを収める場所がなかったのだ。小型・省スペースの筐体ゆえの制約で、これはどうにもならない。NASのHDDは3.5インチ。手元のLinux機には、それを内蔵で挿す余地がない。
3.5インチHDDをLinux機に繋ぐには、いくつか道がある。USB変換のHDDスタンドを使って外付けにする、3.5インチベイのある別の小型PCを用意する、あるいは──ふと頭をよぎったのは、昔懐かしい玄箱だった。が、手元のものはおそらく初代の古い世代で、いまのUbuntu機とは系譜が違う。母艦として担ぎ出すには、さすがに古すぎる。懐かしさはあっても、今回の現実的な選択肢からは外れる。
結局、最初の「USBで外付けにする」が、いちばん手早く確実だという結論になった。
次の一手 ── クローンスタンドを発注した
そこで、3.5インチHDDをUSBで繋ぐための道具を一つ発注した。玄人志向の KURO-DACHI/CLONE/CRU3 というクローンスタンドだ。
このスタンドは、3.5インチ・2.5インチのSATA HDD/SSDを2台まで挿せて、PCなしのボタン操作でドライブをまるごとクローンできる。各スロット最大16TBに対応し、接続はUSB3.2 Gen1(理論値5Gbps、いわゆるUSB3.0相当)。通常時は2台分の外付けドライブとしても使える。「3.5インチをどう繋ぐか」という今回の懸案を、そっくり解決してくれる一台だ。クローン機能まで備えているので、生きていることが確認できれば、その先のバックアップや移行にもそのまま使える。価格も3千円台と手頃で、直販でも手に入る(メーカー製品ページ)。
ただし、過信は禁物だ。製品のレビューを見ると、クローン元のHDDがS.M.A.R.Tエラーを抱えていると、クローン開始時にエラーで止まってしまう場合があるという。だから今回の最初の目的は、いきなりクローンを走らせることではなく、まずはUSB外付けとして繋いで、中身がマウントできるか=HDDが生きているかを確かめることに置く。生死がはっきりしてから、クローンするか、フォーマットして再利用するかを決める。順番を間違えないようにしたい。
次回へ ── 生きたHDDを、どう第二の人生に送り出すか
というわけで、今回の記録はここまで。NAS本体の復活は叶わなかったが、そのおかげで「壊れたのは本体、HDDは生きている」という切り分けにたどり着けた。これは、十分に意味のある一歩だったと思う。
次回は、発注したKURO-DACHI/CLONE/CRU3が届き次第、取り出したHDDを実際に繋いでみる。まずは生死の確認から。NASのHDDはLinuxのファイルシステムでフォーマットされているので、Windowsでは中身が見えない可能性が高い。そこで活きてくるのが、Linux機であるhsBoxだ。スタンド経由でhsBoxにHDDを繋ぎ、外部からデータを読み出せるかを試してみる。生きていることが確認できたら、その先の活用──通常の外付けHDDとして転用するか、別の小型Linux機に内蔵して常用するか、3.5インチベイのある機種を新調するか──を、改めて検討していきたい。
NASという箱は寿命を迎えた。けれど、その中で生きていたドライブには、まだ続きがある。「死んだNASから救い出したHDDを、無駄にすり減らさず、次の役割に就かせる」──その実作業の記録は、次回に。
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