見つかった情報、とても有用です。これは生コンクリート(レディーミクストコンクリート)の発注・設計仕様の表記で、いくつか重要なことが読み取れます。
表記の意味を分解する
「21+3 N/mm²」
これは強度の指定で、2つの数字に分かれています。
- 21 = 設計基準強度(Fc)= 構造物が満たすべき強度 = 21 N/mm²
- +3 = 構造体強度補正値(温度補正値、通称S値)= 3 N/mm²
「+3」は、コンクリートが寒い時期だと強度の発現が遅れるため、その分を上乗せして発注する補正です。つまり実際に発注した呼び強度は 21 + 3 = 24 N/mm²ということになります。
補正値が「+3」というのは、極寒期ではない標準的〜やや涼しい時期の打設を示します。この補正がきちんと入っているのは、発注時の品質管理は一応まともだったという良い兆候です。
「18 N/mm²」(一部)
これは設計基準強度18 N/mm²です。部位によって強度を使い分けるのは正常な設計です。一般的には:
- 18 N/mm² → 捨てコンクリート(基礎の下の均しコン)など、構造的に重要でない部分
- 21 N/mm² → 基礎・躯体など構造部分
という割り当てが多いので、「一部が18」は不自然ではありません。
「S-15」
これはスランプ15cmを指します(S = スランプ)。<br> スランプは生コンの軟らかさ(流動性)の指標で、15cmは標準的な値です。18cmや21cmだと水が多めの軟らかい配合ですが、15cmは普通〜やや硬めで、過剰に水っぽい配合ではありません。
この情報からわかること
1. 「普通のコンクリート」という説明は事実と整合
18〜21 N/mm²、スランプ15cmは、まさに住宅・小規模建物の基礎に使われるごくありふれた標準仕様です。高耐久コンクリートでも手抜きの異常な低強度でもありません。施工業者の「普通のコンクリート」という説明は、仕様上は正しいと言えます。
2. ただし、これは反りの問題と整合する強度帯
ここが重要です。設計基準強度18〜21 N/mm²というのは、W/C(水セメント比)がやや高めの配合に相当します。
| 設計基準強度 | 想定されるW/Cの目安 |
|---|---|
| 18 N/mm² | おおよそ 60〜65% |
| 21 N/mm² | おおよそ 58〜62% |
これは前にお話しした「W/Cが高いと多孔質になり、乾燥収縮・乾湿差による反りが出やすい」という話とぴったり符合します。 異常な配合ではないものの、乾湿差の繰り返しに対しては元々あまり強くない部類、ということです。つまり「材料が特別悪い」というより「標準的だが、この過酷な乾湿差環境には耐久性の余裕が少なかった」という構図が見えてきます。
この情報の限界(重要)
ただし、これはあくまで**「設計上・発注上こう指定した」という紙の上の情報**であって、以下は分かりません。
- 実際にその通りの生コンが納入・打設されたか(伝票と現物が一致したか)
- 現在の強度(15年経過した今、設計通りの強度を保っているか)
- 正確なW/C(上の表はあくまで強度からの推定範囲)
特に、反りやひび割れが進んでいる現状では、設計値と実物が乖離している可能性も否定できません。
結論:次にどうするか
この仕様情報は、前回お話しした「報告書探し」と並んで大きな前進です。判断としては:
- 強度や配合が「異常に悪い」わけではないと分かったので、「とんでもない欠陥施工だから全面やり直し」という方向ではなく、前回提案した「乾湿差の抑止+表面保護」の対策路線が妥当だと裏付けられました。
- もし過去のコア抜き報告書に実測強度が載っていれば、「設計21 → 実測どうか」を照合でき、再コア抜きの要否がほぼ確定します。
- 実測値がどこにもなく、現在の劣化度を数値で確認したい場合のみ、再コア抜きを検討、という順序です。
この仕様情報はどこで見つかりましたか?(建築確認申請の図面、施工時の書類、生コン伝票など)<br> 出どころが分かると、同じ資料の中に実測強度の試験成績表や配合報告書が一緒に残っている可能性があり、それがあれば再調査なしで話が進む可能性があります。
原因の推定結果(事前推定)
これは典型的な**「反り(ワーピング)」**現象です。あなたの説明から、かなり明確なメカニズムが見えてきます。
現象の原因:乾湿差による差動収縮
発生メカニズム
【表面(乾燥側)】
温度:高い変動
湿度:低い
→ 急速に乾燥収縮
【裏側(湿潤側)】
温度:ほぼ一定
湿度:常に高い
→ 乾燥収縮ほぼなし
【結果】
表面が縮む < 裏側は縮まない
↓
→ 表面が裏側に引き込まれ、中央が浮き上がる(反り発生)
なぜ中央が2cm盛り上がるのか?
- **大きな面(5m×5m、2.5m×8m)**では、周辺部は下地に固定されている
- 中央部は拘束が少ないため、自由に変形できる
- 表裏の乾湿差が15年間繰り返されることで、累積的に反りが進行
コンクリート材質の問題
このような反りが出やすいコンクリートの特徴:
1. W/C が高い(50~60%以上)
- 多孔質で、表面からの水分蒸発が早い
- 乾燥収縮が大きく、かつ不均一な乾燥になりやすい
- 反りが顕著に出やすい
2. 初期ひび割れが多い
- W/C が高いと、初期段階でひび割れが発生
- ひび割れから水分が出入りしやすく、さらに反りが加速
3. 混和材がない
- フライアッシュやシリカフューム無添加
- 乾燥収縮が大きい傾向
4. 不適切な養生
- 初期養生期間が短い
- 急速乾燥による初期反り
15年経過で2cm反るのは異常か?
**かなり大きいです。**通常は以下のレベルです:
- 健全なコンクリート(W/C 40%程度):数mm程度
- 標準的なコンクリート(W/C 50%):5~10mm程度
- あなたのケース(2cm):W/C が相当高いか、材質・施工に問題がある可能性
劣化のリスク
この状態では:
| リスク | 内容 |
|---|---|
| ひび割れ進行 | 反りに伴う引張応力でひび割れが増加・拡大 |
| 水分浸透加速 | ひび割れから水が浸入し、鉄筋腐食へ |
| 凍結融解損傷 | 北日本の場合、表面がスケーリング |
| 段差・転倒リスク | 土間の場合、2cmの段差は転倒危険 |
| 構造性能低下 | 壁の場合、断面欠損や耐力低下 |
考えられる材質上の問題
あなたのケースから推察される配合の問題:
推定配合:
- セメント:300 kg/m³ 以下(少なめ)
- 水 :170~180 kg/m³(多い)
- W/C :55~60%(高い)
- 混和材 :なし
- 初期養生:不十分
対策案
短期対策
- ひび割れの充填:シーラント・エポキシ注入で水分浸透阻止
- 防水塗装:表面防水で乾燥速度を抑制
中期対策
- 段差調整:セルフレベリング材で段差解消(土間の場合)
- 除湿:裏側の湿度を低下させて、乾湿差を縮小
根本対策
- 改築時:W/C 40%以下、混和材含有の高耐久コンクリート採用
- 新規施工:適切な初期養生、防湿シート施工